京扇子の老舗・宮脇賣扇庵
200年の伝統と職人の矜持
創業は文政6年。202年の歴史を持つ京扇子の老舗・宮脇賣扇庵。そこには、江戸時代からほぼすべての製品を自社で作り上げ、脈々と受け継がれてきたものづくりの伝統があります。扇子の手触りや開き具合、重さ、使い勝手など用と美が一体となった扇子作りに迫ります。
一扇にこめられた繊細な手仕事
扇子は87回職人の手を通ると言われています。その工程は20余りに分かれており、宮脇賣扇庵では全てが手作業でおこなわれています。寺村義治さんは30歳からこの道に入り、現在83歳。実に、半世紀以上にわたり、夫婦で扇子の仕上げ工程を担ってきました。


その代表的なしごとは、紙の芯に息を吹き込んで穴を開き、扇骨を紙に差し込む「中入れ」。1日で400回も息を吹く日もあり、体力と集中力を要します。
扇骨の一本一本は形も長さも微妙に異なり、すべての長さ、形に合わせて作業を調整しています。扇骨を短くすれば扇骨が紙に入りやすくなり作業効率はあがりますが、扇子の開け閉めや収まりの美しさに影響がでるために常に理想の長さにこだわり作られています。一方で、竹の硬さや削りの状態でも、差し込む際の難易度も変わるため経験に裏打ちされた繊細な作業が求められます。
また、扇子の親骨を温め内側に曲げる「矯め」は、竹に熱を加えることで、素材によっては折れやすくなるため絶妙な塩梅が必要な工程。この工程を経て、パチッという子気味良く閉まる使い心地が生み出されています。

寺村さんが職人として何よりも大切にしているのは「お客さんに喜んでもらえるものを、誠実に作ること」。たとえ一本の依頼でも、「ただ納めれば良い」とは考えず、納得できるまで丁寧に仕上げています。見た目は華やかな扇子でも、その裏には膨大な手間と工程があります。扇骨のわずかな長さの違いや、中入れした扇骨の位置などでクオリティが大きく変わることも。繊細な手仕事の積み重ねが、美しく閉じて開く一本の扇子を生み出しています。寺村さんは「いまだに満足できる一本は作れていない」と語ります。素材や条件が毎回異なるため、常に臨機応変な対応が求められる中で、今も昔も変わらずに持ち続けているのは、「一つ一つを丁寧に作りたい」という想い。その静かな語り口や所作の中に、職人の手仕事と深い知見が凝縮された伝統の技を力強く垣間見ることができました。
民藝や日本古来のモチーフをモダナイズ、特別な三柄

今回、MOMOTARO JEANSでは、18間と呼ばれる最もクラシックな扇子の形をベースに、「桃太郎」、「ひらがな」、「瓢箪柄」の3柄を展開します。親骨にはMOMOTARO JEANSのロゴを刻印しアイコニックな仕上がりになっています。パチッと子気味良く締まる使い心地は職人の手仕事から生み出され、ひとたび手に取って扇げば、心地よい風とともに宮脇賣扇庵のオリジナルの香料・麝香が仄かに香ります。

KYO SENSU - MOMOTARO
オリジナルの「桃太郎とお供達」をモチーフにしたデザイン

KYO SENSU - HIRAGANA
菅原道真公が児島・唐琴の事を詠ったとされる和歌「船とめて波の漂う琴の浦通うは山の松風の音」をひらがなで表現したデザイン

KYO SENSU - HYOTAN
民藝の焼き物や柄からインスパイアされた図形を総柄したデザイン
宮脇売扇庵
文政6年 美濃国出身の初代が、京都の扇屋の近江屋新兵衞の株を買い受けて創業。三代目新兵衞が交流のあった富岡鉄斎により賣扇桜という京の銘木にちなんで賣扇庵という屋号を名付けられる。創業より扇子を自社で製造販売し、工芸品としての飾り扇を考案するなどしてきた。店頭にはあらゆる種類の扇子が取り揃えられ、中でも明治35年に作られた京都画壇48名によって描かれた天井画を見る事ができる。