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素材を育て、縄を綯う。稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り

素材を育て、縄を綯う。
稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り

2025.12.26 STORY

一年の始まりでもあり、日本の美意識が色濃く現れる行事「お正月」。その大切な節目を迎え入れる支度として、MOMOTARO JEANSでは、お店の入口や店内に岡山地区に伝わる「しめ飾り」をしつらえます。

素材を育て、縄を綯う。稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り

年末年始にかけ、各家庭に飾られる様々な形のしめ飾り。しめ飾りとは、新年に幸福をもたらす「年神様(としがみさま)」をお迎えするための準備として、玄関などに飾られる日本の伝統的な藁細工です。年末に身の回りを整えた後、家の内外にしめ飾りを掛けます。そうすることで年神さまに「ここが清らかな場所である」ということをお知らせし、災厄を払い、福を招くとされ受け継がれてきました。


岡山地区に伝わるしめ飾り「眼鏡」型

しめ飾りの特徴のひとつに、日本各地で形が異なることがあります。材料となる藁は、稲作を終えた後に生まれるもの。田んぼのある家庭や地域にて作り継がれてきたため、その土地ごとに発展し、独特の形が存在しています。

素材を育て、縄を綯う。稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り

岡山県の南部に伝わるしめ飾り「あんこ眼鏡」

年末年始にかけて私たちが飾るのは、岡山地域で継承される「眼鏡型」のひとつ、特に児島など南部に見られるしめ飾り「あんこ眼鏡」です。藁で“あんこ”を作り、それを包みながら二つの縄を綯(な)い、輪に仕上げる。まるで眼鏡のように見えるその形が「見通しのよさ」を象徴します。また、左右から内側に向かって綯われる縄の螺旋は「福は内」を意味し、吉兆を呼ぶものとして永く親しまれてきました。

素材を育て、縄を綯う。稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り

2つの輪があしらわれたしめ飾りはすべて、岡山県の各地に伝わる「眼鏡型」。中央上のしめ飾りは、京都や山口県に伝わる「鳩」。向き合う鳩と2つの輪が重なり、夫婦円満を意味しています。


素材づくりから、選定、縄綯いまで。
その地域の文化を受け継ぐ手しごとを

しなやかさと力強さをあわせもつあんこ眼鏡。その伝統的な形を端正に綯い上げてくれるのは、岡山県高梁市吹屋を拠点とする「丙(ひのえ)」の作り手、藤本羊さんです。

素材を育て、縄を綯う。稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り

もともとはパタンナーとして、ものづくりのキャリアをスタートした藤本さん。「空間を自由に飾ることよりも、ひとつひとつのプロダクトを整えて作り上げる作業が得意で、その性分が、しめ飾りづくりに合っていた」と語ります。材料をきちんと量り、決めた型へ丁寧に落とし込んでいく。その揺るぎない工程が、天然素材である藁を扱いながらも、美しく均整のとれた作品へとつながります。

素材を育て、縄を綯う。稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り
素材を育て、縄を綯う。稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り

藤本さんのしめ飾りづくりは、材料を”育てる”ところからはじまります。使用する藁は、すべて自らが育てたもの。春に畑を耕し種をまき、夏に稲を刈って乾燥させ、選別する。その地道な準備を繰り返すことで、秋が深まる頃にようやく縄を綯う準備が整う。そして年末に向けて、ひとつひとつ作品が仕上げられていきます。

素材を育て、縄を綯う。稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り
素材を育て、縄を綯う。稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り

また、地域に受け継がれてきた意匠へ敬意を払い、飾り立てるのではなく、素材がもつ素朴な力を生かすことを大切にしています。その土地に残されたかたちを丹念に読み解き、バランスや大きさを現代の感覚で整える。そうすることで普遍性をもつ佇まいを追求し、次代へと受け継がれるよう作品を作り続けているのです。

素材を育て、縄を綯う。稲の文化に根付く「丙」のしめ飾り

写真左は、MOMOTARO JEANSの店頭に飾られる「あんこ眼鏡」。添えた和紙は、MOMOTARO JEANSを象徴する深い藍色「特濃」をイメージし、藍染で仕上げています。写真右は、藤本さんが毎年制作する干支の置物「午」。脚を締める糸には、藍染の糸を用いました。

新しい一年を迎えるために、心を整えるしつらえを

   

2025年MOMOTARO JEANSのお店には、世界各地から多くのお客様が足を運んでくださいました。来たる年も、皆様との出会いの場に清らかな風が吹いてほしい。そんな願いを込めてしめ飾りをしつらえ、一年の始まりに備えています。これからも誠実なものづくりと確かな品質を大切にし、着る人の人生を豊かにする一本をお届けできるよう努めてまいります。

2026年も、どうぞよろしくお願いいたします。

「丙(ひのえ)」

岡山県高梁市吹屋を拠点に、しめ縄やしめ飾りをはじめ、さまざまな藁細工を手がける「丙」。田植えから収穫、選別、縄綯いまでのほとんどを手作業で行い、素材のもつ美しさと、地域に伝わる伝統的なかたちを引き立てる佇まいを追求している。「丙」の名は、四柱推命の陰陽五行における「太陽」を意味する文字に由来。素材となる藁が陽光の恵みなしには育たないことへの敬意が込められている。

※しめ飾りは店頭ディスプレイのため、販売は行っておりません。

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