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「特濃-TOKUNO BLUE」と、
MOMOTARO JEANS
かつては作業着として生まれたブルージーンズがスタイルを示すワードローブの主役となって、
もうずいぶん年月は流れました。
今ではあらゆる人々が慣れ親しみ、身近な存在となったデニム。
でも、そこにはまだ誰も知らない価値と、可能性が秘められているはず。
ルーツと向き合いながら、次の時代を拓くものづくり。それこそが、デニムの聖地で生まれた
MOMOTARO JEANSが何より大切にしていることです。
時が経つほどに増す青の深みと、時代を超えても褪せない魅力。
その美しいブルーのように、ジーンズがいつでもフレッシュなものであるために。
PHOTO : Kousuke Matsuki / Kazumasa Takeuchi(Ye/product)
EDIT & TEXT : Rui Konno
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児島の話、
MOMOTARO JEANSのストーリー
日本最古の文献とされる『古事記』にもその名が見られる児島の地。
本州西部、岡山県倉敷市にあるこの場所は、400年ほど前まで瀬戸内海に浮かぶ大きな島でした。
干拓によって本土と陸続きになったことで、塩分を多く含む土壌でも育ちやすい綿が
次第に栽培されるようになり、今日の繊維産業の発達へとつながってゆきます。
工業機械の設備が整い、それを扱える技術者も多いこのエリアで
デニム文化が花開いたのは必然と言えるでしょう。
それでも、もしかしたらこの地で暮らす人々は、
かつてデニムの青の奥行きに特別な感情を抱いたのかもしれません。
陽射しに照らされきらめく海が、きっとそうであったように。
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「ヨーロッパで発祥し、アメリカで製品化され、自由や反骨の象徴となったもの。
そんなジーンズが、今では日本を代表するプロダクトのひとつになっている。
その不思議なストーリーが、僕が児島という場所に興味を持つきっかけになりました。
紡績から、染色、製織、整理、縫製に加工と、デニムにまつわる工程がはっきりと分業され、それぞれに特化して
強いこだわりを持った職工がいるこの三備地区は、まさにクラフツマンシップの集合体のような場所。
世界中でオートメーション化が進む中で、
合理性とは別のところから生まれる強さを確かに体現していると思います。
僕たちMOMOTARO JEANSは
そんな児島で生地問屋をルーツに持ち、2006年に始まったブランドです。
現在では希少な旧式力織機を完璧に扱える技術者や、
テーラリングに精通した縫製師、藍染の職人といったメンバーが、
それぞれの仕事に誇りと想いを持って、ものづくりをしてくれています。
自分自身、若い頃に洗礼を受けて、いまだにデニムを穿いています。
だけど、生意気なことを言えば僕らも彼ら職人たちも、ノスタルジーを追い求めているわけじゃない。
単なるファッションではなく、良質なプロダクトとしてのデニムにこだわって、穿いたときの驚きと、
その新しい楽しみ方を創造して、ジーンズの常識を変えてゆきたいんです。
この児島の地と、職人たちが積み重ねてきた伝統を次代に継承していくこと。
彼らの熱量を途絶えさせず、革新を続ける姿勢それ自体が伝統であると示すこと。
どれだけ技術や機械が発達しても、良いものというのは結局、
最後は人の力によって生まれると僕たちは信じています。
そんなものづくりが、MOMOTARO JEANSの本懐です」。
(株式会社ジャパンブルー 代表取締役社長 鈴木完尚)
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藍より青い、“特濃-TOKUNO BLUE”
MOMOTARO JEANSのデニムを象徴するのが限りなく深く、濃いブルー。それによってエイジングのおもしろさはさらに増し、色落ちのコントラストはより美しく際立ちます。“特濃-TOKUNO BLUE”と呼ばれるこの独特の青の秘密を、ここでは紐解いてゆきます。
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“67本”という稀有な打ち込み
一般的なデニム生地というのはインディゴで染色された経糸と、白い緯糸とによって織られるもの。デニムの青は経糸によるもので、ジーンズの色落ちはこの経糸のフェードによって生じます。1インチの幅に約64本の経糸を用いるのが一般的なところを、MOMOTARO JEANSの“STANDARD”シリーズでは67本という高い密度で経糸を打ち込んでいます。それによって覗く緯糸の白の分量は減り、生地の色濃さは格段に強まります。ブルーにこだわり、製織にも精通したMOMOTARO JEANSならではの、デニムの新しい提案です。
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1 “STANDARD”
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2 “CLASSIC”
1が“STANDARD”シリーズで、2が古き佳きヴィンテージの表情を宿した“CLASSIC”シリーズ。後者のオーセンティックな質感と比べると、いかに“STANDARD”シリーズのトーンが深いものかがわかるはず。
繰り返す染めとカインド・オブ・ブルー
MOMOTARO JEANSで使われる、多くのデニム生地は広島県にあるカイハラで染色が行われています。130年以上の歴史を持ち、世界的メゾンや国内外の人気ブランドに生地を供給している同社の中でも、MOMOTARO JEANSの経糸は異質なもの。その理由が、藍から生まれる青色に着想を得て開発した独自の染料と、その染色回数にあります。
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染色を控えた縦糸は、500〜600本程の糸の束でドラムに巻かれ、約7000ヤードにも及ぶ糸を巻き終えるころには、整経ボールと呼ばれる大きな塊に。それが染色機に掛けられてからはまず、糸の脂分などを落とすために洗い・すすぎの前処理が行われます。
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インディゴ染料から上がったばかりの糸は黄色みが強く、これが空気に触れて酸化することで徐々に青みを帯びてゆきます。カイハラの染色棟ではインディゴ槽と空中とを何度も往復させる形で染色を行ない、それが奥へと流れてゆくと次第に青の濃さが顕著に。通常よりもこの工程を多く繰り返すことで、普通ではまずありえないMOMOTARO JEANSの濃いブルーは表現されています。
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グラデーション状に見えるのは、施設の床と天井近くを何度も往復する染色中の糸。右側の進行方向に進むにつれて青の濃度が上がっていることがよくわかります。染まり切った特濃の状態でも、ロープ染色特有の芯の白が確認できるはず。これが製品になったときの美しい色落ちの要です。
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その後、複数回のすすぎを経てpHを安定させ、色は定着。蒸気を通したシリンダーに巻くことで乾燥させたら縦糸は完成、製織工場へと出荷されます。
こうしたいくつもの特殊な工程と、数多くの職人たちの知恵と協力によって、MOMOTARO JEANSの製品は作られてゆきます。アイデアとこだわりによって、当たり前のデイリーウェアに新鮮さと喜びを。
デニムをめぐる、MOMOTARO JEANSの挑戦はこれからも続きます。
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